A.カルダーラ「悲しみのミサ曲」

【楽曲紹介-4】A.カルダーラ ≪悲しみのミサ曲≫ Missa Dolorosa

■ヴィヴァルディと同郷で同世代、おまけに同じアントニオの名を持つカルダーラには、比較的馴染みが薄いかもしれませんが、当時はウィーンの宮廷副学長として名をはせた最も高名な作曲家の一人でありました。またオペラ・宗教曲はじめ2千、3千ともいわれる作品を遺した多作家としても知られています。

■この≪悲しみのミサ曲≫は、全体を通して、曲名とおりの底知れぬ哀しみを帯びながらも、展開が素早くドラマティック!。細かく区切られた全17曲を、人間が有する溢れ出る感情のごとく、起伏に富んだ曲調と厚みのある和声で、ソロ・合唱・器楽が自在に織り重なりそして見事に紡いでまいります。

■筋金入りのバロックファンなら、「こんな素晴らしい作品があったのか!」と思わず膝を叩かずにはいられない、堂々たるスケール感をもつ隠れた傑作と言えるでしょう。実演に接するこの貴重な機会をどうぞお聴き逃しなきよう、会場にてお待ち申し上げます。

A.ヴィヴァルディ 「クレド ホ短調」

【楽曲紹介】A.ヴィヴァルディ ≪クレド ホ短調 RV 591≫

■コンサートの幕開けを飾るは、合唱、弦楽および通奏低音による約10分ほどの小品です。小品ながらも、ミサ典礼文「クレド(信仰宣言)」のテキストを4つのパートに分け、中間部(第2曲、第3曲)の美しくも痛切な響きを、壮麗な冒頭第1曲、そして再び主題があらわれた第4曲が包み込む、劇的な構成が印象的です。

■この曲の成立過程はわかっていませんが、おそらくは ≪グローリア ニ長調 RV 589≫と同時期のものと推測され、随所にその共通する伸びやかで力強い旋律を耳にすることができるでしょう。

A.ヴィヴァルディ 「深紅色で描かれた女」

【楽曲紹介】A.ヴィヴァルディ ≪深紅色で描かれた女 ≫ Ostro picta, armata spina RV 642

■この印象的なタイトルの作品は、≪グローリア≫の導入歌として書かれた10分程の楽曲(澤江衣里さんによるソプラノソロ)です。実演奏会で≪グローリア≫と併せて演奏される機会は日本ではそう多くはなく、貴重ではないでしょうか。

■深紅色とはバラのこと。【1】朝方は美しく咲き誇るも、夕方にはしおれてしまう、野バラの儚い情景。【2】野バラの儚さに重ね合わせた地上の(人生の)栄光と、聖母マリアの永遠の栄光を対比。【3】マリアの貞淑・神聖さ、神の栄光を賛美する。 このような内容の詩に、アリア-レチタティーヴォ-アリアの3部構成で音楽が綴られています。

■この極めて美しい調べに導かれ、すぐさま!≪グローリア ニ長調 RV 589≫が輝かしく幕を開けるスリリングは、ライブならではの醍醐味ですね。どうぞ客席でお愉しみください。

A.ヴィヴァルディ「グローリア」

【楽曲紹介】 A.ヴィヴァルディ ≪グローリア ニ長調 RV 589≫

■第2回定期演奏会のラインアップで最も有名な楽曲が、このヴィヴァルディ≪グローリア≫。耳に馴染みやすく、また編成が手頃で少人数の合唱団でも取り上げやすいことから、歌ったことがある!という方もいらっしゃるでしょう。CMやテレビ番組等でも、その華やかで快活な冒頭曲をしばしば耳にします。

■スケッチが1939年にようやく発見されたこの曲の成立過程は、はっきりとはしていませんが、当時ヴィヴァルディは、慈善機関であるピエタ院で働いていました。そこでは、親に捨てられた孤児を引き取り、付属音楽院にて女の子を対象に8歳から10歳にかけて集中的に訓練し、歌や楽器などの音楽教育を授け、音楽家として生きていける職能を与えていました。この≪グローリア≫も、その合奏団のレパートリーの一つとして作曲されたのではと言われており、独唱がソプラノ、アルトの女声にのみ充てられていることからも推察されるでしょう。

■英BBCでは時代考証に基づいて、ヴァイオリンやチェロ、オルガン、オーボエ、トランペットといったほかの楽器もすべて、少女たちによって奏でられていた様子を、衣装や演出にもこだわって視覚的に再現しています。2人のアントニオが生きた時代に思いをはせる、一つの手がかりとして、ご覧になってみてはいかがでしょう。

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